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by revolver0319

標高 大石内蔵助2

 二人の休みが同じになるとその前日には里香の部屋に恋人の白石耕太が泊まりにやってくる。いつもはレンタルしてきたDVDを観ながら、何を食べたいかを話し合い、食べるものが決まると出かけるのがパターンだ。もっとも衣食住には最低限の出費しかしない二人が行くのは安い店ばかりだが。
「忠臣蔵を見よう」
この日は里香が時代劇スペシャルという特別番組を見たいと提案してきた。
「チューシングラ・・・?」耕太は困ったような顔をした。
「耕太君知らないの?忠臣蔵。赤穂浪士だよ」
「あっ、忠臣蔵か。何だか殿様の敵を討つやつだ」
「うーん…。アバウトすぎるけどそんなところだね」
 オレンジ色のアウトドアメーカーの大きめなヤッケを着た里香は、ポンポンと耕太の肩を叩いて微笑むと自分から唇を重ねて軽くキスをした。それは議論の話し合い終了を意味していた。
大学時代からその美貌は何かと騒がれていた里香が可愛い仕草でキスしてくるのである、それは男にとって核爆弾くらいの威力はあった。
「付き合って下さい」
 何度言われたか分からないが、里香は一度もそれを受け入れたことがなかった。男と付き合うために大学に来ているのではないという自覚があった。
 女の子の友達に何度も合コンに誘われた。それも一度も行ったこともなかった。ある友達は土下座するくらいの勢いで頼んできた。
「お願い里香。今日だけは付き合って。お金も要らないし座っていれば口をきかなくてもいいから」
 どうやら「長浜が来るなら」という条件でかなり好条件の男子を揃えると言われたらく、そう言って手を合わせられたがそれでも断っていた。
「ごめんね。私は彼氏が欲しくて学校に来てるんじゃないの」
 里香はいつもそう言って断った。その美貌に驕っているわけではない、むしろ周りからは「もっとその美しさを利用しろ」と言われている。
「そんなにまじめに勉強ばかりしてどうするの」とみんなが口を揃えるが、里香は勉強も別にどうでも良いと言うのだ。
「じゃあ何が目的で学校に来ているの」
 友達として付き合いが始まると必ず聞かれた。そんなときに里香はまじめな黒目がちな顔でこう答えていた。
「山のためよ」
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# by revolver0319 | 2009-07-07 20:46