フリーライターです。書き綴ったものを載せてます。


by revolver0319

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伝説のババアたち

「○○ババア」と呼ばれるひとが近所にいなかっただろうか?

 その存在は子供たちに恐れられるとてつもない恐怖なババアなのである。

 だが、具体的な被害者が周りにいることはなく、あくまでも噂の恐怖のババアなのである。



 例えば俺のが子供の頃にいたのは、川崎の街にわずかに残された雑木林があって、その林の入口に朽ちそうなボロい家があり、そこにひとりで住むのが「全力ババア」と呼ばれる恐怖ババアその1である。

 子供にとって雑木林というのは天国のような遊び場であった。
 カブトムシやクワガタはもちろん、俺たち世代は最後のトリモチというネバネバなものでメジロを生け捕りにして子供でもあるのだ。

 だが。そう簡単には雑木林には入れない。
 そう
 全力ババアがいるからである。

 なにしろこのババア、雑木林に入ろうとする子供を見つけると
「入るんじゃない」と凄い剣幕で怒り出し、それでも入ろうとすると、全力疾走で追いかけて来る。

 しかもそのスピードが半端ではなく、どんなに足に自信のあるやつでも必ず掴まる。

 見つからずに入れたとしても、カブトムシなどを捕まえていても油断はならない。

 木々の中で何かが動いている、なんだろうと見ているといきなり全力ババアが飛び出して「カブトムシを返せ」と絶叫しながら、やはり全力疾走で追いかけて来る。

 もちろん逃げても無駄だ。

 逃げて追いつかれ掴まるとどうなるのか?
 虫やメジロは取り上げられるが、それ以外は曖昧だ。だが噂では掴まった者たちはどれほど強がっていても必ず号泣しながら雑木林から出て来るらしい。

 そんな恐怖のババア。その雑木林でずっと遊んでいたがラッキーなことに俺は追いかけられたことはないし、俺の周りにも追いかけられた経験者はゼロ。

「昨日林に行って全力ババアの家の前を通ったら、窓からババアの顔が見えたんだ。もちろんすぐに逃げたよ。危なかった」
 なんていう話は時々聞いた。ババアが外にいたら追いかけられていたよ。家の中でよかった、助かった。
 そんな話だ。

 もちろん俺も毎日のように雑木林に行くのだから、何度かババアの顔を見たことがある。それは家の中にいるババアの姿をちらりと見ただけである。だがとうぜん翌日の学校では。
「ババアと目が合った。やばかった。ババアは追いかけてこようと表に飛び出そうとしたけど、間一髪逃げ切ったよ」
 なんて自慢するのだ。

 そうして全力ババアの恐ろしさは増していくのである。


 もうひとり。
「猫殺しババア」と名前がすでに恐ろしいババアが近所の木造3階建てという、今考えれば建築基準法など完全に無視したバラックのようなアパートに暮らしているババアだ。

 なにしろこのババアは子供の頃に学校で散々いじめられ、年老いた今でも子供が大嫌いで、ババアに逆らった子供が飼っていた猫を叩き殺したという伝説のババアなのであう。

 ともかくこのババアアパートの入口(3階建てだというのに入口はひとつ、しかも半間しかない)付近に座り込み、ともかく子供を睨みつけているのである。

 もちろん多少は腕に覚えのある腕白坊主(完全に死語だな)でも、ババアのほうは見ないようにアパート前を走り抜けるのである。

 過去にこのババアに「クソババア」や「死ねババア」とケンカを売った勇者が数人いたらしい。

 もちろんソッコーでババアに捕まりアパートの中に引きずり込まれたのは言うまでもない。

 このアパートの周りにはいつも焼酎の瓶がごろごろ捨てられていて、昼間から酔っ払いの奇声がが聞こえるような所で、ろくな人間は住んでいなかった。子供にしてみればそのアパートは化け物屋敷みたいなものである。

 そんなところに引きずり込まれるのだからただですむはずもない。
 もちろん引きずり込まれた者が周りにいないので「ただではすまない」が具体的にどうされたのかは誰も知らないが、ババアの部屋には猫の死骸がごろごろしていて、中には人間の死骸も混じっているのではないか、というような話もちらほらと聞こえ、具体的な猫殺しババアの被害者はいなかったが、全力ババアと同じく、間一髪で助かった者は多数、というか小学生全員が一度や二度は猫殺しババアの間の手を掻い潜って来たことになっていた。


 果たして、今の子供たちにもそんな恐怖の存在はいるのだろうか。


 数年前に気付いたことがある。
 それは自分は本当に真っ当な人間でしかないということ。

 残念ながら27歳で死ねなかった俺はロックスターではないことを自覚し、それでも俺はジミヘンやジャニスやジムモリソンやブライアンジョーンズのように途中でくたばることもなく、這いずり回って、クソみたいな世間にしがみ付いて生きてきたのだ。
 だからそれを誇らせてもらうことにして、若くしてくたばった数々のスターたちに勝利宣言をすることにした。


 ではお前は何をしたのだ。
 ジミヘンはギターの世界を確実に変えたぞ。
 ジャニスの叫びに何億もの人間がひれ伏したぞ。
 ジムモリソンがエドサリバンショーで言い放った一言は伝説になったぞ。
 ブライアンジョーンズがいなければストーンズは生まれなかつたぞ。

 で、お前は?
 常に自分に自問自答してきた。
 もはやスーパースターになろうとなんて思っていないが、それでも少しは世の中に何かを投げつけてやりたいと思い文字を書き連ねている。

 そしてもうすぐ終わってしまうのであろう2013年に俺は、俺の生き方をはっきりと見つけることが出来た。

 ちょっとそのために全力で走ってみたいと思う。
 なのでしばらくブログは休憩させていただきます。

 いつか「ニカクミッカ」も「ハムバッカー」も完成させようと思っています。


 もうしばらく時間を下さい。


 そろそろ俺が、じめじめとした借家で暮らす「狂ったジジイ」と近所の小学生に噂される存在になる番かもしれません。





 まぁそうはいっても気紛れに「メルティングポイント」を作ってその宣伝をしたり、どうしても書きたいものがあるときはそっと書いているかもしれませんが、一応一区切りです。



 それではこのブログをたまに覗いているコアな人たち良いお年をお迎え下さい。


 いつでもどこかで会いましょう。



                  大森茂幸
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by revolver0319 | 2013-11-14 21:49

ハムバッカー

 「もー。いい加減にしてそろそろご飯でも食べにいこうよ」
 俺は昨日の夜2回やって、朝起きてもう一度やって、その後ずーっと由加里のオッパイを揉んでいた。そのうちにムラムラしたらもう一度やろうかと思っていたが、どうやら由加里は腹が減ったらしい。

「なぁ、兄弟喧嘩ばかりしていたオアシスっていうバンド知ってるか」
 パンツをベッドの下から拾い上げて履いて、上半身を起こしてブラジャーを付けようとしている由加里を押さえつけるように、もう一度寝かせると乳首に吸い付く。
「もー、そんなバンド知らないよ。アン」

「アン」っていう声に反応したので、本格的にキスをして、パンツの中に指を忍び込ませる。

「そのバンドの名曲のなかに『だから俺はベッドの中で革命を起こすんだ』っていう歌詞がある」
 由加里は少しだけ濡れていた。一気にパンツを脱がせると、そのまま彼女の股間に顔を埋める。

「ハァハァ、何、もう、ハァ、歌詞の話しなんて、やめ、ハァ―、やめて」
 感じ出した由加里は、喘ぎ声を必死で抑えるよ話そうとするが、彼女の性器は瞬く間に濡れそぼる。

 俺は昨晩からほとんど立ちっぱなしの股間を由加里に咥えさせて。
「ベッドの中で革命か。やっと意味が分かったぞ」
 由加里の口から抜いてみると、俺の股間はギンギンだ。キヨシローも死んじまったしな、と、俺の性欲は猿も真っ青だな、と、同時に考えて、「Don't Look Back Anger」をハミングしながら挿入した。

 小さなワンルームマンション、シングルベッドのすぐ横にはスタンドに立てかけられた’63年ギブソンES-335と、ブギーのアンプが置かれている。その両方のローンは確か残り三カ月くらいだ。
 由加里の喘ぎ声と、彼女の腰の動きでイキそうになると、今日も機材のためにバイトですよ、と考えて気分を逸らす。だけど面倒くさいから挿入後4分で射精する。気持ちよさよりも痛みのが多いがそれでいい。

 飯は食いたいけれど、昨日ライブハウスに払ったチケットノルマ代と、打ち上げの飲み代で一文無し。だけど打ち上げで由加里をゲットできてSEXが出来たし、まぁそれでよかった。

 由加里が飯を奢ってくれたらラッキーだし、駄目ならバイトの賄まで我慢するだけだ。


 4回目のSEXが終わると、由加里の身体がだらしなく見えた。
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by revolver0319 | 2013-10-01 00:07

ニハクミッカ

 父は高校を卒業後、省線の運転手になり昭和39年新幹線こだまの運転手になるまでに出世し、国鉄がJRになる前に退職し「これからははのんびり暮らすよ」と言っていた。その言葉通り毎月発売日に時刻表を買っては、それを一週間かけてじっくりと眺めていた。

 知らない人が見れば時刻表など読むところがあるのかと思うだろうが、数分おきに組み込まれた首都圏の電車のダイヤ。それを考えながら徐々に波のように全国に広がる、各線のダイヤは、常に進化を続ける方程式のようで、毎月少しづつ、どうすればもっと無駄なく電車を運行できるのかが考えられていて、毎年四月のダイヤ改正でその集大成を見せてくれる。

 つまりは進化し続ける芸術作品だ。

 父はそれを一週間かけてじっくりと読み解いていく。

 僕も父の影響を受け、小学生のころから時刻表を見ていたが高校生になっても、一冊の時刻表から先月からの進化を読み取るのに一か月はかかった。

「それはそうさ。俺たちが作っていたものだ。俺と同じスピードで読み取ろうなんて、二十年早いよ」

 父が生きていればきっとそう言っただろうが、父は退職して三年後にあっさりと他界してしまった。




続き読みたい人いますか?
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by revolver0319 | 2013-07-23 22:34
世の中に流通する様々な商品の中の、その大半は大量生産の使い捨てるような物ばかりだ。

そんな物に目をくれずに、本当に一生使える物を
または作り手の熱い気持ちがこもった、そんなものを身に着けたいと思わせるアイテム。

そうした物を私たちバイカーという生き物は選ぶのである。


「この革ジャンを作り上げるためにどれほどの苦労と努力があり、どれほど心血を注いで作られたか。どうだ着て見なさい。ほらバイクを乗る時のポジションに合わせてあるからまったく疲れないから。何より一生ものだよ」

ほうほうと20万ばかりの革ジャンを買う。
確かにそこらの物とは出来が違う。これはいいぞと5年ばかり着ていると。

「新作の皮ジャンが出来たんだよ。一生ものだよ」

なんていう下手な落語のような話もたまにはあるが,世間の軽薄な使い捨て流通に囚われたくないと考えている。


だが、そうしたアイテムは手作ゆえの悲しさか、一度に作れるのは少量だったりする。

まぁ作り手も金持ではないので、大量生産して在庫を抱える余裕もないという事情もあるのだが。


しかし少量しかないからこそ人気が出るということもある。

「あいつがあんな物を作ったぞ」
一気に話題になり、たちまち売り切れる。


その数少ないアイテムを運よく入手できた者たちは非常に喜び、一年中それを身に着け「どれほどこのアイテムが優れているか」をそこいら中でしゃべるので、それが抜群の宣伝効果となり。

「俺も欲しい」
「また作ってくれ」
なんていうリクエストがばんばんとやってくる。

ファーストモデルは30しか作れなかったが、今回はリクエストだけでも50は来ているぞ。

そうしてセカンドモデルが作られるのである。

だがファーストから数年。
世の中のトレンドなんて関係ないとはいえ、やはり時間の流れの中で、作り手の意識も多少は変化する。
デザインや機能性が進歩するのも当然だろう。

結果ファーストモデルよりもセカンドモデルのほうがより良い物になったりする。


では、セカンドが発売されるとファーストの価値はさがるのか。

否。
セカンドのようにように洗練さにはかけるし、機能性だって劣るが、
「もう二度と入手できない元祖モデル」
というプレミアム感が俄然輝きだし、
とんでもない価値観の上昇につながるのだ。

それが大概のファーストモデルというものである。



さて
これもファーストモデルである。



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このモデルを作る前に作者のTJ先生は自分用のプロトタイプを作っている。

それはスカルにフックをかけられる仕様のものだった。


「俺もそっちのがいいな」
このファーストモデルを買う前にTJ先生に一応聞いてみると。

「いやー、これはもう作れないんですよ。なにしろ面倒だし、コストも上がっちゃうし・・・・」
などとほざいいていたのだが。



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ぬけぬけとこんなセカンドモデルを発表した。


これはもう今まで話してきた内容とは違い、明らかな作戦だとしか思えない。

服やらアクセサリーならファーストもセカンドも持っていても問題はない。

ところがナンバー用のボトルなど、それこそ一台のバイクにはひとつで十分だし、気分で換えるような物ではない。

だがそれでは売れない。

そこでTJ先生が考えたのがこの作戦だ。

実はファーストモデル発表時からこのセカンドモデルは完成していたのである。
しかし、このモデルを作るのに試行錯誤し、失敗したスカルだけのボルトが500セットばかり出来てしまった。

そこで先生。
「苦労してやっと完成しました。スカルアーティストの私が自信をもってお贈りする、最高のスカルナンバーボルトです」

などとしゃーしゃーと嘘をつき。その上。
「手作りなので50セットしかありません」
嘘の上塗りで、実に3日で500セットを売りつくした商魂魂。

それから1年。いままで隠しておいたこのフック付モデルを。
「やっと完成」
なんて言いながら売り出したのである。


まったくもって金のためならなんでもやる男である。

この情報源は現在ロシアの空港内に身を潜めている元CIA職員の口から暴露されたのだから間違いない。
しかもあの元CIA職員はアメリカが怖いのではなく、TJ先生にびびって身を隠し、TJ先生の手の届かない国への亡命を模索しているらしい。


ああ、暑い。
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by revolver0319 | 2013-07-02 12:32

MELTING POINT

多くのご注文ありがとうございます。

注文メールしたのに返信のない方
返信はあったが現物が届いていない方

いらっしゃいましたら連絡ください。


なお、まだ在庫有ります。


大森
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by revolver0319 | 2013-05-09 19:06

MELTING POINT

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誰も待っていなかったかもしれませんが、お待たせしました。
メルティングポイント2号発売します。

1冊500円
送料1冊につき120円。同封でも2冊なら240円。

購入希望の方は
revolver@ayu.ne.jp
まで郵便番号から住所お名前、電話番号、希望冊数を送信してください。
こちらから振込先を返信いたします。

まれにこちらのアドレスが拒否されるのか、送信できないことがありますのでご注意ください。

尚メルティングポイントはコピーで手作りした冊子です。
熱いメンバーで何か感じられるものを詰め込みましたが、普通の雑誌のように綺麗ではありません、
中身は別として冊子自体は小学生でも作れるような代物です。
ご了承ください。

今回もコピーして折り曲げて、糊付けして梱包発送までひとりでやっています。
120冊が限界でした。
より多くの人に渡したいのでまとめ買いはご遠慮ください。

「俺の分とっといて」
「今度でいいから持ってきて」
「会ったときに払うよ」
はすべてなしです。

どんなに仲の良い人でもメールのみの受付です。

我儘ですみませんが、よろしくお願いします。

今回のメンバーは
あんちゃん
よっしー
ターキィ
しんちゃん
ミノル
ヒラクさん
キンさん
モリチー
せーじ


そしてスペシャルモデルが登場
これを買うであろうほとんどの人が知っているであろう女性がモデルとして登場しています。

それでは
またまた面倒なバイカーの世界観を堪能してください。


大森
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by revolver0319 | 2013-04-26 20:10

柏餅と米糠の曖昧な記憶

 うちの母親の料理は旨かった。
 素人レベルでは最高峰クラスの旨さで、天才だったのかもしれない。

 子供が嫌いそうなきんぴらごぼうや切干大根なども、今にして思うと子供用に味付けをしてくれていたから美味しく食べられ、いまだにそんな昔ながらの惣菜が大好きだ。

 男なら誰しもがが母親に抱く愛おしさを今更文章にするほど落ちぶれてはいないつもりだが、味覚という武器は母親の料理が教えてくれた。



 桜が散り、新芽の芽吹きがまだ緑が薄い時期。
 つまりは今頃になると思い出すのが、なぜか柏餅と米糠の匂いだ。

 米糠の匂いは竹の子を茹でているときの香りだろう。
 昔はどこの家でも、春になれば竹の子を茹でていた。
 
 茹でる前に剥かれた皮の匂いが、トウモロコシと同じ匂いで、いつまでも鼻に押し当てていた。何しろ夏になるとトウモロコシさえ与えていれば何も言わないような子供だったから、春の竹の子の皮の香りは、もうすぐトウモロコシの季節になる予感を感じさせてくれた。

 母親は茹で上がった竹の子の柔らかな部分を少しだけ俺の口の中に入れてくれる。
 新鮮な竹の子は、まぎれもなくトウモロコシと同じ味がした。


 素材の味を知らなければ味覚など語れるはずもない。

 そんな体験が味覚の基礎になったのだろう。



 なぜ竹の子と柏餅が同じ記憶の引き出しに一緒に入っているのだろうか。
 柏餅は5月。だとしたら関東での竹の子は終わっている時期だ。

 
 柏の葉の香りと、味噌が混じった不思議な白あんの味。
 いつもは粒あんだが、柏餅だけは手間をかけてこしあんに。
 そんな記憶ははっきりとしているが、それが竹の子と同じになる理由が分からない。



 新東名から見える薄い緑の山を眺めながら、必死で記憶の引き出しを探りながら、思い出そうとしながらショベルを走らせる。

 数台の先頭を走りながら岐阜を目指し、記憶を手繰る。

 先日、ある集まりでCDを持ち寄ることになった。
 月に一度集まり、価値観を曝け出すという男3人の集まりは、今現在の一番の楽しみで、どうしようもないほどに満ち足りた時間を提供してくれる。

 その集まりにそれぞれ一枚ずつCDを持ち寄ることになった。

 全員が自分以外の二人に「さすが…」と思わせたいと考えるのは当然だ。



 手持ちのCDをじっくりと眺め、何を持参するべきかを考える。
 時間は夜。集まるのは雰囲気の良い店。

 手にしたのはニールヤングの「ハーベストタイム」とCSN&Yの「デジャブ」
 集まるメンバー、毎回語り合う赤裸々なまでの価値観の晒しあい。
 もはやニールヤングしか思いつかなかった。


 だが、当日俺が持参したのはニールヤングではなく、ハードロックのアルバムだった。

 その晩。驚くことにほかの二人が持参したのがニールヤングのアルバムだった。

 俺が「ハーベスト」でも「デジャブ」でも持っていったら、その晩はニールヤングベストナイトとなったいた。

 つまりは俺以外の二人は、まんまとその場の雰囲気にやられて、素直にニールヤングを選択ししたのである。

 勝負だとするならば、あえてそこを外した俺の大勝利だろう。


 記憶の引き出しを明後日も柏餅と竹の子の関係性が思い当たらずに、来月は何のCDを持参しようかを考える。

 名古屋の手前、高速が渋滞しすり抜けをし、後ろのメンバーを置き去りにし、ショベルが快調に走る。
 多少肌寒いが、確実に春が深まり、薄い緑は濃い色に変化し、もうじき初夏の匂いが漂いだすだろう。

 ここ数年の初夏の味覚はヤングコーンの丸焼き。
 それは竹の子と同じ香りで、ほっとする暖かさを与えてくれる。


 味覚の記憶の引き出しと、3人の濃密な時間に流れる音楽と。

 頭の中で流れるのはこの曲で、



 帰ったらアレサ・フランクリンのブルースを聞こうと思う。

 取り留めもない意識と、ショベルの上から見る景色とヘルプレス。


 そうだった。
 ああ、そうだった。

 なるほどそれなら柏餅と米糠だな。

 唐突に蘇る記憶に、ばらばらな思考がひとつに繋がる。


 味覚の良さは負ける気がしない。
 
 
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by revolver0319 | 2013-04-15 23:04

SNOW

 先日TJ先生に誘われたので、シェイクハンズ・ミーティングに行った時のことである。
 
 今回は誰も知り合いもいないだろうし、TJ先生の店の裏あたりでひとりでぽつりとキャンプするかと考え、晩飯もセブンイレブンの冷凍食品&レトルト食品だけを持って、絶好調のショベルで関越道をのんびりと会場まで。

 最近ではミーティングでひとりっきりなんて久しくなかったから、やや緊張気味で会場に。

 一人旅は好きだが、一人ミーティングは今一つ盛り上がらないからね。
 しかし会場に入るとすぐにキンさんルルさんを発見。

 おかげで一人ミーティングになることなく、TJ&13GANG店舗裏で飲んだくれ。


 で、皆様ご承知の通り、最近のTJ先生。ミーティングにはお気に入りぞうさんを持ち込み(象じゃないよギターだよ)「俺のギターテクニックを見やがれ」とばかりに、ギターに夢中な高校生レベルで弾きまくって、みなさん少々引き気味ですよね。

 まあね、いいと思うのですよ。本当にギターは上手いからね。聞いていて嫌でもないし。
 永遠に「天国への階段」を繰り返すわけでもないので、まぁよしとしましょう。


 でね。
 最近俺とTJ先生はロック談義なんかを少々したりするんですね。


 あのバンドはカッコいいとか、あのギタリストはなかなかだ、なんてそんなレベルですがね。


 さて、今回のシェイクハンズミーティング。
 TJ先生商売気分ゼロのご様子で、まったく店にいないでギター抱えてあっちふらふら、こっちふらふら。でもってビールもすすんでますます仕事やる気ゼロ。


 そんな感じのTJ先生が。

「えー、では、今回はヴァンヘイレンの話でもしますか」
 などと言い出した。


 それで俺がサミーヘイガー好きだというと驚かれたりと、話はそこそこ盛り上がったのである。


 あぁ本当にTJ先生はロックがすきなのだなぁ、などと裏のタープに戻り、キンさんルルさんと飲んでいると、完璧に仕事やる気ゼロのTJ先生がやってきてみんなで飲むのですが、話は音楽からラーメンに。

「最近永福町行ってるんですか」
 TJ先生がルルさんに聞く。

 何も永福町という町に行っているのかを聞いているわけではない。こんなときに。
「あ、俺永福町に住んでたことあるんですよ、懐かしいなぁ」
 なんて言ってしまったら額にTJスカルの跡がくっきりと残るくらいの強烈なパンチを見舞われること間違いなしだから注意が必要だ。

 先生が「永福町」と言った時には「大勝軒」の事を指しているということは、TJ先生と少しでも関わるのなら覚えておく必要があるし、試験があるとすれば一番最初に覚えなければいけないほどの基本中の基本である。

 おそらくTJ先生が国会議員になったら「永福町駅」は「大勝軒前」に変わり、「西永福町」は「大勝軒の西側」に。ついでに「明大前」は「大勝軒まで歩ける距離」に変えられるだろうことは間違いなしだ。

「最近行ってないな」
 ルルさんがそう答えると、TJ先生の顔色が激変した。

 ちなみにルルさんはTJ先生が「大勝軒の女神」と崇めるほどのステージの高さであり、ラーメン教のサマナ服があればオレンジが着られるほどのステージの高さである。

 そんなルルさんが最近行っていない。
 これはもうラーメン教では朝晩のお祈りをしないことと同等の許されないことである。

「女神失格にしますよ」
 TJ先生は、まるで引金に指を掛けた時のデューク東郷のような目をルルさんに向けた。

 ルルさんもラーメンごときでそれほどTJ先生がムキになるとは思っていなかったのでしょう、少々焦った様子で。

「あっ。でも○○はこの前食べた」

 するとTJ先生。
「ほー、どこ店のを」
「○○通り沿い」
「ああ、あそこ」
 そこで少し間をおいて。
「で。味はどうでした」
 
 TJ先生の頭の中には首都圏主要ラーメン店の全てのデータがインプットされています。なんという店のどこどこ支店の味はどうだった、そんな自分の頭の中にある情報と違う答えはそれだけで、こいつはラーメンの真実を何も分かっていない奴というレッテルを貼られます。

 そうなったらラーメン教内では一生浮かばれません。
 
 答えを間違えようものなら、今この場ですかさず殺す。
 そのくらいの迫力で、ルルさんの目をじっと見つめるTJ先生。

 
 なんとかルルさんの答えは合格点だったようで、その場は丸く収まりましたが、あのときにルルさんの答えがTJ先生の気に触れていたら、所沢VS大宮仁義なきラーメン戦争に突入し、埼玉県は二つに分裂し国を挙げての大騒ぎになっていたことでしょう。

 歴史とはそういうところで動いているのですね。

 さて、その後TJ先生のラーメン談義は続き、俺もキンさんルルさんも「もういいよ」とは思っていましたが、そんなことを口に出したら大変なことになるので、じっと我慢していたのですが、その時に俺はある事実に気が付いたのです。

 それはTJ先生の顔がロック談義をしているときの数十倍もラーメン談義のときのほうが輝いているということです。


 俺は試しに。
「TJ先生、ギブソンの最高に乾いたボディーの最高の鳴りがするオールドレスポールと大勝軒100食無料券があったらどっちが欲しい」
 そう聞いてみたのです。

 オールドレスポールは何百万もする代物。もちろんこれは例えであって、自分の誕生年月のストラトでも構わないし、あるいはリッケンバッカーでもいいのですが、ロックとギターが好きなら迷うことなどないでしょう。

 するとTJ先生。
「あんまりレスポール好きじゃないし、大勝軒だな」
 あまりにも堂々とそう答えたのでした。


 そのときこんな伝説を思い出しました。

 あるとき、若きエディー・ヴァンヘイレンの家に彼女が遊びに来ました。
 彼女の相手もせずにギターばかりを抱えているエディーに彼女が。

「ギターと私とどっちが大事なの」
 そう聞くと。


「何を言っているんだ。ギターに決まっているだろう」

 その時のヴァンヘイレンと、大勝軒100食無料券を取ったTJ先生の顔は同じ、あるいはTJ先生のほうが、より揺るぎない自信に満ちていたかもしれません。


 あぁ。TJ先生の中での順位は。

 ラーメン・ロック(ギター)・シルバーの順なのだとはっきりと認識しました。

 僕は真夜中になろうかという花園の河原で頭の中で。


この曲のギターリフを思い出していた。

「TJ、ドームのライブで一曲一緒にプレイしないか」
6月に来日予定のヴァンヘイレンがそう言っても。
「そんな時間があるなら永福町行くに決まったんだろう、バカヤロー」
TJ先生はそう答えることでしょう。


 最近ブログがご無沙汰なTJ先生。
 きっと数年後にはシルバーではなく、本格ラーメンで出店しているかもしれません。


 そう、それがTJなのだから。


 
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by revolver0319 | 2013-04-02 14:25

大人の尊厳

 ショベル復活絶好調。
 天気は快晴春気分。
 なのになんだか忙しい。

 そんな大森がお贈りする久しぶりのブログは、大人の哀愁を語る切なくも勇気溢れる物語。

 なはず。




 目黒の串揚げ屋で飲んでいた。
 生ビールを5杯。
 それからホッピーを3杯。

 ちなみにホッピーの中身は、あのものすごく安い焼酎だと悪酔いする。
 というのが我々の定説で、中身だけ違う焼酎にしてもらうという面倒くささ。

 それから芋焼酎をロックで4杯。

 で、時間である。

 何しろうちは神奈川の秘境本厚木。

 小田急線の最終に乗らなければならない。
 しかも新宿~本厚木は結構遠い。
 だからこの間はいつもロマンスカー使用である。

 最終のロマンスカーは新宿を23:30発である。
 目黒の串揚げ屋はJR目黒駅まで徒歩20分と遠い。
 だから22:30には店を出る。

 気落ち良い酔っ払い加減で権之助坂をとぼとぼ上がり、山手線で新宿に。

 ロマンスカーまでには少々時間に余裕があった。
 

 小田急線新宿駅ロマンスカー専用ホーム内売店。
 奇跡はこの売店のおばちゃんがもたらしたと言っても過言ではなかった。

 時間があった僕はこの売店でコーラを買ったのである。

 このとき売店のおばちゃんが、なぜか1本だけの缶コーラを袋に入れてくれたのである。

 どうせロマンスカーの中で飲みきり、空き缶をロマンスカー内のごみ箱に捨ててしまうのである。

 「袋は大丈夫です」
 普段の僕なら確実にそういうが、なぜかその時は袋のままもらいロマンスカーに乗車したのである。


 定刻に満員状態で発車したロマンスカー。

 ロマンスカーは全席指定なので立っている乗客はいない。
 窓側席の俺の隣には、仕事帰りのサラリーマンが座っている。

 新宿を出ると町田に一度停車し、次に本厚木である。

 缶コーラを飲むべく袋から取り出す。袋は前の座席に付いている網のポケットに入れておく。
 コーラを3口ばかり飲むと、睡魔に襲われ目を閉じた。
 すると・・・。

 目が回るのである。
 目を閉じているのだから見えるはずのない、ロマンスカーの天井がぐるぐると回っているようで、ともかくぐるぐるぐるぐるぐるぐるしているのである。


 長らく酔いどれダメおやじやっているので、そんな状況はどのような状況かは分かっている。

 やばい。
 そう、やばい状況なのである。

 こんな時の対処方法は二つしかない。

 眠らずに目をきっぱり開けて、二次方程式の問題でも頭の中で解く。

 もしくは意識を失うように眠ってしまうかだ。

 
 酔っ払いダメおやじ会では俺もボチボチ中堅所からベテラン枠に入ろうとしている。だからこんなロマンスカー内でのやばさなど、軽くいなしてしまうのである。


 俺の取った作戦は、目をつむるとやばいので、目をしっかりと開けたまま二次方程式を頭の中で組み立てつつ、そのまま意識を失う。という良いとこ取りである。


 やばかった俺は適正な対処でどうにか危機を乗り越えたのである。

 しばしの間俺の記憶はなくなる。
 きっと天使の寝顔ですやすやと眠っていたのだろう。
 しかし、
「間もなく町田です」
 という無粋なアナウンスで意識を取り戻してしまったのである。

 町田まであと3分といったところだろうか。この時またあのやばさが襲ってきたのである。

 酔ってやばい状態で意識を失うときは、できれば翌朝までそのまま。
 でもって起きた瞬間に。

「うげー。気持ち悪」
 と、最悪な気分で起きるのがまだましなのである。

 意識を失って数十分で起こされる。しかも快適なはずのロマンスカーの揺れが俺の酔っ払い加減をさらに増大させているのである。

 目が覚めた瞬間に。
 「駄目だ。吐く」
 冷静に判断できるあたりにベテランとしてのいぶし銀な味わいがある。

 小学生の子供が電車に酔ってしまって吐く。
 これはまぁしょうがない。

 しかし。
 もうすぐ50歳になろうかというオヤジが、あろうことか満員のロマンスカーで吐くなどということは許されない。

「よしトイレだ」
 俺は立ち上がろうと、少しだけリクライニングさせていたシートから上半身を起こした。

「だ、だ、だ・め・だ」
 俺に残された歩行可能歩数は4ないし5歩しかないことを、その瞬間にはっきりと認識したのである。数歩歩いたら全部。きれいさっぱり吐き出してしまう。

 事態はそこまで緊迫していたのである。

 ではどうするか。

 そのままじっとしていても1分が限度である。
 まさか隣に見ず知らずの人が座っているのに、ここで吐くのか。
 それはどうなんだ。大人としていいのか。
 
 最近はどんな醜態をさらそうと後悔などしないが、これはさすがに自己嫌悪に陥るだろう。なんて考えているうちに、俺の胃の中身は「発射しますよー」と徐々にせり上がってきている。

「もうだめか」
 諦めかけたその瞬間。
「町田。町田に到着です」
 するとぞろぞろと大半の人が降車。
 俺の隣の仕事帰りサラリーマンも降りたのである。

 神の思召しか。ともかく見ず知らずの人前で吐くという、最悪のプレーは避けられた。

 だが、安心してはならない。
 もはや俺の胃袋の中身はマジで飛び出す5秒前である。

 ああ。小田急職員だか下請け会社の方だかは知らないが、いつもこの車両を掃除してくれている人がいるのに、俺はその床に、目黒の串揚げ屋で食った、ソース二度付け禁止の串カツ、ウインナー、シイタケ、オクラ、ウズラなどをホッピーでミックスしたものを吐いてしまうのか。


 その瞬間、前の背もたれに袋を発見したのである。

 そう。あの新宿駅ロマンスカー専用ホーム売店のおばちゃんが缶コーラを入れてくれた袋である。

 町田を出発したばかりのロマンスカーホームウェイ21号本厚木行き4号車8Ⅾの席で、俺は袋の中に目黒の串揚げを吐いた。

 助かった。大人として床を汚すことなく、ちゃんと袋に吐けたのである。


 だが、缶コーラを入れた袋である。それほどデカくはない。

 俺の吐瀉物で袋はパンパン。ぎりぎりこぼれずに済んだが、ともかくパンパンなのであった。

 だがしかし、売店のおばちゃんのナイスプレーで大人の尊厳を守った俺は、パンパンの吐瀉物袋片手に、車窓から、流れる夜の座間市あたりのどうでもいい景色を眺め、すっきり気分でいたのである。


 それが去年の年末の話である。

 

 パンパンの袋は、本厚木駅のごみ箱にたたき捨ててしまいました。

 小田急線職員の皆様。ごめんなさい。

 
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by revolver0319 | 2013-03-21 17:05

ヒゲとボイン

「髭」の問題である。

昨年末のことだ。
世間様が
「忘年会が重なって大変ですよ」
なんて走り回っている頃。

組織に属していない俺はといえば、どこの忘年会に呼ばれるわけでもなく。
「『いやー毎日忘年会続きでさ。嫌になっちゃうよ』などと言っている奴らは肝臓壊せ。バカヤロウ」
などとブツクサいいながら、ひとり家で猫の頭を撫でながら缶ビールを飲んでいた。
そんな年末。

もちろん組織に属していないからという理由で、参加する忘年会がないだけで、嫌われているからどこからも呼ばれない、というわけではない、ということは強く強調させていただく。

そんな俺にもほんの少しだけ。昨年実績で言わせてもらうと2件だけ「忘年会」に呼ばれたのである。

そのうちの1件で、忘年会前に某先輩の店に行くと「何か気付かないか」と質問されたのである。

店中を眺めるが、
「そうじゃない」とのこと。

その先輩の顔をじっと見ていると、
「あっ。髭がない」
ということに気が付いたのである。

バイク乗りには「髭」確立が相当に高い。
周りを見渡せばほぼ100%に近い確立で髭だらけである。

だから、そのようなヒゲにまみれているのだから、誰かひとりが髭を剃ったところで、意外と気が付かないものなのである。
というのが俺の持論だ。

以前にも何十年も生やし続けた髭を剃った男がいたが、やはり誰も気が付かなかったということも、実際にあったのである。

だから。
「それは気付きませんよ。俺が顎鬚剃っても誰も気付きませんよ」
というと。

「大森が剃れば気付くだろ。だってお前が髭剃ったら顔から毛がなくなっちゃうんだよ。絶対に気付くよ」
先輩はそう言っていた。



そうだ。顔から毛を無くしてしまえばいいのではないだろうか。
その瞬間俺は閃いたのである。

何に閃いたのかといえば、
「キャッチ」の問題である。

街を歩いていると、世間様はいろいろと声を掛けられているようである。

美容室のモニターはいかがですか。
コンタクトレンズ安いですよ。
震災復興の募金お願いします。
などなど・・・。

頑張っているアルバイト諸君から、完全に目が逝ってしまっている怪しげな宗教がらみのものまで、多種多様なキャッチが、大きな街になればなるほど沢山いるではないか。

しかし、何故か俺はその手のキャッチにまず声を掛けられることがない。

何故だろうか。10代の頃はアメ横に行くたびに「自衛隊に入らないか」と声を掛けられたものだが、最近声を掛けられるとすると。

「ちょっとご協力いいですか」
などといいながらやって来る警察官の職務質問のみである。

そんな俺が非常に憧れているのが、新宿や池袋でしょっちゅう見かける。
「手相の勉強をしているのですが、よかったら少し見させてください」
とか。
「占いの修行中なのですが、よかったら見させてもらえませんか」
というアレである。

女子は占いが好きなようなので、そういうところに金を出しても行きたいという方もいるであろうが、一般男子は占いと聞いても「けっ」っていう感じではないだろうか。

まず金を出してまで見て欲しくはない。
見て欲しいとしたら。死ぬほどの悩みを抱えているか、よほどの思い悩むことに苦悩しているか、そんな状況じゃなければ、占いなどに行くことなんて一生ないであろう。

幸いのほほんと生きているので、死ぬほどの悩みは
「ショベルの調子がいまひとつで」レベルだし。
思い悩むのは
「おっぱい揉みたい」
くらいなので、占いを必要としていない。

しかし、ただで見てくれるというなら話は別だ。

俺に。
「よかったら占わさせて下さい」
と、なぜか妙に地味な連中が多い、その手のキャッチが近づいてきた。
満面の笑みでまず手を握り。
「僕でよければ是非お願いします」
と、力強く頷いて見せてあげるのに。

そう思いながら新宿や池袋の雑踏を練り歩いているのに、妙に地味なあの連中は、俺の前から「ささささ」といなくなるのである。

なぜ俺に声を掛けない。
そう叫びたくなるくらいである。

そんなことを何十回も繰り返せば、さすがの俺も。
「ははーん。俺にはどうやら声を掛けにくいオーラみたいなものがあるのだな」
ということに気が付く。

それはまあ何といいましても、この見た目が一番の要素であろうことは、キッパリとあきらかである。

スキンヘッドは帽子を被れば分からない。では何か。

俺の目は自分で言うのもなんだが、割と可愛らしい。
口なんかも小さめで控えめだし、絶対に日本人だよね、としか思えない低い鼻なども「根は良い奴」感を滲み出している。

まぁそれらのトータルバランスが「イケている」部類に入らないのは重々承知しているが、それでも。
「やばすぎる」程ではないだろうと思っている。

ではなぜだ。なぜ地味な連中は俺を占ってくれないのか。
研究の結果。
「髭」がよくないのではないか。
という結論に至ったのである。

そこで、先の先輩の件の後に、俺も5年以上剃らずに伸ばし続けた顎鬚を綺麗に剃ってみたのである。

鏡で確認したところ、なかなかの爽やか感、そして爽快感。
「おおっ。これなら地味な連中もぐっと声を掛けやすいだろう」
という喜ばしい感じになったのである。

で、世間様が新年会だと騒いでいる、今年の年始である。

組織に属さない俺は、どこの新年会に呼ばれることもなく・・・、以下忘年会と同じくだり。

件の先輩のところに新年の挨拶に伺うと、やはり俺の顔から毛が無くなったことにはまったく気付かなかったのである。

「よーし。これならキャッチの連中もわさわさ寄って来るはずである」

俺の自信は確信へと変わったのである。

でもって、そんなおりにせーじの写真展が新宿であるではないか。

よしよし。
なにかこう自分に向かって良い運気が回ってきているような、そんなタイミングの良さではないか。

今年はいいことありぞうだぞ。

そう意気込んで新宿に向かったのである。

もちろん時間には十分に余裕を持っての行動である。

なにしろ今日は、手相と占いを梯子して、なんなら怪しい宗教のセミナーにでも出席し「宇宙の真理」の勉強でもした後に、写真展である。

写真展の会場は東口であるが、俺は西口に出た。何しろ地味な占い連中とか、目が逝ってしまっている宗教連中は西口の駅出口からユニクロ周辺にわんさかいるからである。

俺は自己のオーラをすべて消し去り、うつむき加減にしょぼくれた感を満載にして、JR新宿駅西口を出ると、そのまま思い出横丁方面に、とぼとぼと歩いたのである。

ときどきちらりと顔を上げると、いるいる、地味なのや目が逝ってるの、おまけに今日は「私の詩集買ってください」まで揃っているではないか。よーし、占ってもらえたら君の詩集も買ってあげるからね。

俺は浮き足立ちそうになるのをぐっと堪えて、あくまでもしょぼくれて歩いた。


えー。髭というのはどこかしら「自由」の象徴みたいなところがあるのかもしれない。

昔に比べればずいぶんと世間も許容してくれているが、やはりお堅い会社勤めには髭は難しいであろうし、整えているわけでもない、伸びた髭を生やせていられるというのは、そこそこいい環境にいるからこそ出来るのかもしれない。

だから、やはり俺はまた髭を生やすのである。

あれだよ。あれほど張り切って向かった新宿で、結局誰にも声を掛けてもらえずに、予定よりもだいぶ早く写真展に行ったからじゃないよ。

そうだ、キャッチといえばやはりその本職は「ポン引き」であろう。

我が街本厚木には、それほど大規模ではないが、風俗店が軒を連ねるピンク街的なところがある。

以前そこをパトロールしていると、本職でプロ中のプロであるはずのパンチパーマポン引き連中も、俺には近づいて声を掛けようとしない。

遠巻きに、遠慮がちに。
「ピンサロいかがですか」
「キャバどうです、今なら三千円です」
などと、あっさりとした対応である。

俺の15メートル程前を歩く、2浪して今年もほぼ志望大学のすべてに落ちて、家の中で暴れていそうな、冴えない兄ちゃんには、ポン引き連中は群がるようにして、接近戦で、なんなら店の中に引きずりこもうかくらいの勢いなのに、俺には半径2メートルには近づかずな対応なのである。

俺にも群がれよ。
もっとぐいぐい誘ってこいよ。
そしたらパトロールだけのつもりだけど、なんならちょっと入ってみちゃうかもしれないだろう、そんな気分で歩いていたことがある。

それでもポン引き共は魚介風味あっさり系な対応でしか俺に声をかけず、ついにピンク街も終わろうとしているときである。

ロンリー気分でしょんぼり歩く俺に向かって、その通り最後に立っていた。そしてやはり2メートル向こうから、あっさりとではあるが。
「オッパイいかがです、オッパイパブ。厚木最安値ですよ」

そこで俺の足はピタリと止まった。
「君、今、なんと言ったのだね」
近づいてこないポン引きのすぐ横にこちらから近づいて確認すると。
「オッパイパブです」
そう答えた。

そこからしばらく、俺のオッパイ感を丁寧に説明してやり、そんな俺を満足させることは出来るのかね、ということを聞いてみた。

数年前にそんなキャッチとのやり取りもあったな。

そうだ、今度新宿に行ったら、俺のほうから妙に地味な連中の手首をがっちり掴み。
「占われたいのですが、よかったら占ってもらえませんか」

髭面で迫ってみよう。
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by revolver0319 | 2013-02-07 15:12