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by revolver0319

ニハクミッカ

 父は高校を卒業後、省線の運転手になり昭和39年新幹線こだまの運転手になるまでに出世し、国鉄がJRになる前に退職し「これからははのんびり暮らすよ」と言っていた。その言葉通り毎月発売日に時刻表を買っては、それを一週間かけてじっくりと眺めていた。

 知らない人が見れば時刻表など読むところがあるのかと思うだろうが、数分おきに組み込まれた首都圏の電車のダイヤ。それを考えながら徐々に波のように全国に広がる、各線のダイヤは、常に進化を続ける方程式のようで、毎月少しづつ、どうすればもっと無駄なく電車を運行できるのかが考えられていて、毎年四月のダイヤ改正でその集大成を見せてくれる。

 つまりは進化し続ける芸術作品だ。

 父はそれを一週間かけてじっくりと読み解いていく。

 僕も父の影響を受け、小学生のころから時刻表を見ていたが高校生になっても、一冊の時刻表から先月からの進化を読み取るのに一か月はかかった。

「それはそうさ。俺たちが作っていたものだ。俺と同じスピードで読み取ろうなんて、二十年早いよ」

 父が生きていればきっとそう言っただろうが、父は退職して三年後にあっさりと他界してしまった。




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by revolver0319 | 2013-07-23 22:34