フリーライターです。書き綴ったものを載せてます。


by revolver0319

時の流れの中でーーーー

15年以上前のことだ。
その頃横浜の新杉田という場所でラーメン屋をやっていた。

季節はちょうど今頃。
2月のことだったとおもう。

ショベルを買ったばかりだったその頃、
わりと商売は順調だった。

大雪が降ったその日はさすがに暇で、常連の佐川急便のお兄ちゃんと「どのくらい収入があればポルシェが買えるか」について話し合っていた。

月収手取り70万円のその兄ちゃんは、そのころ買ったばかりの濃紺のレガシーに乗っていて、それを店の前に路駐していた。

そこに
「どんっ」という大きな音が響いた。

原付のスクーターに4人乗りしていた若者が、雪でコントロールできなくなりレガシーに突っ込んだのだ。

慌てて飛び出すとレガシーのリアは多少の凹みがあったが、それほどの事故にも思えなかった。

雪の路上に4人がが投げ出されていたが、みんなすぐに起き上がった。ひとりを除いて。

3人は意識を取り戻さないひとりを必死で呼びかけ、俺はすぐに救急車を呼んだ。


救急隊員は冷静に意識のないひとりをストレッチャーに乗せて、わりと冷静そうな違うひとりを乗せて病院に向かう。

血も流れていなかったので、きっと大丈夫だろうとおもっていた。

残された二人の若者に、寒いだろうからと店の中にいれ、警察の到着を待たせた。

しょんぼりとする二人に「ラーメンでも食うか」なんて冗談をいいながら、大丈夫だからしっかりしろと励ましていた。

警察がきて現場検証が始まると、佐川の兄ちゃんと俺に「即死だったよ」と警察が教えてくれた。

佐川の兄ちゃんは一応路上駐車ということで、警察に連行され、俺と若者二人は別々に状況を聞かれ、若者二人はそのままパトカーで警察に向かった。

1時間ほどで佐川の兄ちゃんは戻り、駐禁を切られることもなく、レガシーの修理代も向こうの親が払うといってくれたらしい。


そんな出来事があった15年以上前だ。




昨日の取材。横浜の港北区。
ショベルチョッパーに乗った32歳の若者の取材だった。
人見知りをするようでいまひとつテンションの低い若者は、どうも取材にノリもでないで、ちょっとやりづらいのだが、重要な場面になると自分のふがいなさを「すみません」と言葉に出来る若者は、ものすごく好感が持てた。

その若者が
「大森さん。昔新杉田でラーメン屋さんやってましたよね」
とボソボソと聞いてきた。
「うん。やってたよ」

その若者があのスクーターに乗っていて、店の中で警察の到着を待たせたひとりだった。


「いつかお礼を言いたかったんです。その節はありがとうございました」

言葉を選びながら、ぼそぼそと、それでも誠実に言ってくれた。


つるりとした顔の10代の若者。そんな記憶しかなかったが、彼は立派なヒゲを蓄えたいい若者になっていた。

「実は今日、俺、結納なんです」

とても寒い雨の中だったが、なんだかちょつと暖かい気持ちになれた。
[PR]
by revolver0319 | 2011-03-01 11:03