フリーライターです。書き綴ったものを載せてます。


by revolver0319

走れ、はしれ

 東北道の4人は翌朝からまた走り始めた。退屈な高速だが、青森まであと300キロばかり。半日で着くだろうから、シゲもフィルシィの杖でぶっ飛ばされる回数も少ないだろう。
 さて、4人が高速のサービスエリアで飲んだくれて周りの迷惑も顧みずにそこらで野宿し、安らかな眠りを楽しんでいるときだ。
 日本海に浮かぶフェリーの中。真夜中でみんなが寝静まっているか、数人が酒を飲んでいたり、風呂の中でノンビリしているときに、「乗降船時以外は入れません」と書かれた一般乗客立入り禁止の札を無視して、車が置かれている車両甲板に入り込んでいる男がいる。非常等以外の光がないので、頭にヘッドランプを付け、手にはマグライトを握り八墓村みたいな格好である。
 車の間をすり抜けると一台のバイクの前にかがみこみ息を殺す。乗組員に見つかれば面倒だ。しばらくそこで様子を伺うが人の気配はしない。工具を広げるとプラグを外しポイントカバーを開ける。バイクはゴミ箱も驚いて逃げ出しそうなほど汚らしく色々なものがぶら下がったり張り付いたり。元の車両が何なのかはまったく分からないが、なんとかショベルヘッドであることだけが分かる。八墓村の正体はRATと呼ばれるごみのようなラットショベルに乗る男である。バイクもおかしいが髪形もちょっとおかしなこの男はショベルの修理に真夜中に車両甲板に入り込んできたのである。
 本来の計画ではタカオというショベルチョッパーと2台で和歌山から敦賀に向かい、そこからフェリーで苫小牧に向かう予定であった。しかし走り出してすぐにアフターファイヤーが派手に鳴り出したのである。走れるところまで走ったが、敦賀はまだまだ遠い。ポイントを換えてみたが駄目。プラグはいつでも20本は持っているので換えてみたが駄目。コンデンサーも違った。キャブをばらそうかとも考えたがそこまでするとフェリーに間に合わなくなる。何しろキャブを外す前にいろいろなものを外さないとキャブが見えないバイクなのだから面倒臭い。
 タカオも手伝っていたが、時間はどんどん過ぎていく。
「タカオちゃん先に行っていいよ」
 ついにRATが口にした。
「そうは行かないよ。二人で何とかしよう」普段のタカオならそう言っただろうが仕事の関係で行ってもすぐに帰らなければならないスケジュールだし、今回だけはどうしても北海道に行かなければならない。
「みんなが会うところを撮影編集しろ」というシゲからの命令も出ている。
 すぐさま自分のリジットショベルをキックすると「じゃあ先に行ってる」とすごいスピードで走り去ってしまった。RATは点目でそれを見送ると地元のトラックを持っている友達に連絡して迎えに来させると。
「舞鶴まで運んでくれ」と頼み込んだ。敦賀からのフェリーには間に合わないが、その後にでる小樽行きの舞鶴からのフェリーなら間に合うと調べていたのだ。トラックで運ぶと、押してフェリーに乗船し、小樽に着くまでにバイクを直し走るという賭けにでたのである。そして旭川でタカオと再開して驚かせてやろうとも考えていた。そんなサプライズが好きなのである。もっとも自分のバイクのサプライズトラブルばかりに驚かされているのだが。
 夜中の車両甲板。エンジンをかけることができないのがつらいが、ともかく圧縮上死点を探すとポイント、コンデンサーを新品ににし、レギュレーターとコイルも新品に変えた。次にキャブをばらし、一通り掃除をして組み上げる。ガソリンが正常に流れているかを確認し、最後にプラグに火が飛んでいるかを確認して、元気に火花が散るのを見て安心する。
「少しだけなら」なんて考えてエンジンをかけようと試みて、空キックを3回。スイッチを入れると気合とともにアクセルを捻りキック。その瞬間猛烈なケッチンを食らい足を抱えてその場に倒れ悲鳴を上げた。
「何しているんですか。立ち入り禁止ですよ」そのときに上船員見つかり、強制的に客室に戻された。
 翌日の午後、小樽に到着。走るはずだ。頼む走ってくれ菊千代(RATショベルの名前)と願いながら甲板に。固定されたタイダウンが外されるとすかさず空キック。スイッチを入れようとするとすでにONになっている。
「????」なぜか。そう、昨夜そのままで強制退場されたのでONにしたままだったのだ。幸いコイルなどは無事のようだがバッテリーは上がっている。事情を話しフェリーで急速充電してもらいまたもや押して降りることに。港でキックをするとラットショベルはエンジンに火が入った。
「今のうちだ」妙な焦燥感のなかでRATは走り始めた。ちなみにタカオは無事苫小牧から旭川目指し走り始めていた。
「やっぱりロングはRATと一緒じゃないほうがいいな」なんて考えながら。
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by revolver0319 | 2010-04-27 13:17