伝説のババアたち

「○○ババア」と呼ばれるひとが近所にいなかっただろうか?

 その存在は子供たちに恐れられるとてつもない恐怖なババアなのである。

 だが、具体的な被害者が周りにいることはなく、あくまでも噂の恐怖のババアなのである。



 例えば俺のが子供の頃にいたのは、川崎の街にわずかに残された雑木林があって、その林の入口に朽ちそうなボロい家があり、そこにひとりで住むのが「全力ババア」と呼ばれる恐怖ババアその1である。

 子供にとって雑木林というのは天国のような遊び場であった。
 カブトムシやクワガタはもちろん、俺たち世代は最後のトリモチというネバネバなものでメジロを生け捕りにして子供でもあるのだ。

 だが。そう簡単には雑木林には入れない。
 そう
 全力ババアがいるからである。

 なにしろこのババア、雑木林に入ろうとする子供を見つけると
「入るんじゃない」と凄い剣幕で怒り出し、それでも入ろうとすると、全力疾走で追いかけて来る。

 しかもそのスピードが半端ではなく、どんなに足に自信のあるやつでも必ず掴まる。

 見つからずに入れたとしても、カブトムシなどを捕まえていても油断はならない。

 木々の中で何かが動いている、なんだろうと見ているといきなり全力ババアが飛び出して「カブトムシを返せ」と絶叫しながら、やはり全力疾走で追いかけて来る。

 もちろん逃げても無駄だ。

 逃げて追いつかれ掴まるとどうなるのか?
 虫やメジロは取り上げられるが、それ以外は曖昧だ。だが噂では掴まった者たちはどれほど強がっていても必ず号泣しながら雑木林から出て来るらしい。

 そんな恐怖のババア。その雑木林でずっと遊んでいたがラッキーなことに俺は追いかけられたことはないし、俺の周りにも追いかけられた経験者はゼロ。

「昨日林に行って全力ババアの家の前を通ったら、窓からババアの顔が見えたんだ。もちろんすぐに逃げたよ。危なかった」
 なんていう話は時々聞いた。ババアが外にいたら追いかけられていたよ。家の中でよかった、助かった。
 そんな話だ。

 もちろん俺も毎日のように雑木林に行くのだから、何度かババアの顔を見たことがある。それは家の中にいるババアの姿をちらりと見ただけである。だがとうぜん翌日の学校では。
「ババアと目が合った。やばかった。ババアは追いかけてこようと表に飛び出そうとしたけど、間一髪逃げ切ったよ」
 なんて自慢するのだ。

 そうして全力ババアの恐ろしさは増していくのである。


 もうひとり。
「猫殺しババア」と名前がすでに恐ろしいババアが近所の木造3階建てという、今考えれば建築基準法など完全に無視したバラックのようなアパートに暮らしているババアだ。

 なにしろこのババアは子供の頃に学校で散々いじめられ、年老いた今でも子供が大嫌いで、ババアに逆らった子供が飼っていた猫を叩き殺したという伝説のババアなのであう。

 ともかくこのババアアパートの入口(3階建てだというのに入口はひとつ、しかも半間しかない)付近に座り込み、ともかく子供を睨みつけているのである。

 もちろん多少は腕に覚えのある腕白坊主(完全に死語だな)でも、ババアのほうは見ないようにアパート前を走り抜けるのである。

 過去にこのババアに「クソババア」や「死ねババア」とケンカを売った勇者が数人いたらしい。

 もちろんソッコーでババアに捕まりアパートの中に引きずり込まれたのは言うまでもない。

 このアパートの周りにはいつも焼酎の瓶がごろごろ捨てられていて、昼間から酔っ払いの奇声がが聞こえるような所で、ろくな人間は住んでいなかった。子供にしてみればそのアパートは化け物屋敷みたいなものである。

 そんなところに引きずり込まれるのだからただですむはずもない。
 もちろん引きずり込まれた者が周りにいないので「ただではすまない」が具体的にどうされたのかは誰も知らないが、ババアの部屋には猫の死骸がごろごろしていて、中には人間の死骸も混じっているのではないか、というような話もちらほらと聞こえ、具体的な猫殺しババアの被害者はいなかったが、全力ババアと同じく、間一髪で助かった者は多数、というか小学生全員が一度や二度は猫殺しババアの間の手を掻い潜って来たことになっていた。


 果たして、今の子供たちにもそんな恐怖の存在はいるのだろうか。


 数年前に気付いたことがある。
 それは自分は本当に真っ当な人間でしかないということ。

 残念ながら27歳で死ねなかった俺はロックスターではないことを自覚し、それでも俺はジミヘンやジャニスやジムモリソンやブライアンジョーンズのように途中でくたばることもなく、這いずり回って、クソみたいな世間にしがみ付いて生きてきたのだ。
 だからそれを誇らせてもらうことにして、若くしてくたばった数々のスターたちに勝利宣言をすることにした。


 ではお前は何をしたのだ。
 ジミヘンはギターの世界を確実に変えたぞ。
 ジャニスの叫びに何億もの人間がひれ伏したぞ。
 ジムモリソンがエドサリバンショーで言い放った一言は伝説になったぞ。
 ブライアンジョーンズがいなければストーンズは生まれなかつたぞ。

 で、お前は?
 常に自分に自問自答してきた。
 もはやスーパースターになろうとなんて思っていないが、それでも少しは世の中に何かを投げつけてやりたいと思い文字を書き連ねている。

 そしてもうすぐ終わってしまうのであろう2013年に俺は、俺の生き方をはっきりと見つけることが出来た。

 ちょっとそのために全力で走ってみたいと思う。
 なのでしばらくブログは休憩させていただきます。

 いつか「ニカクミッカ」も「ハムバッカー」も完成させようと思っています。


 もうしばらく時間を下さい。


 そろそろ俺が、じめじめとした借家で暮らす「狂ったジジイ」と近所の小学生に噂される存在になる番かもしれません。





 まぁそうはいっても気紛れに「メルティングポイント」を作ってその宣伝をしたり、どうしても書きたいものがあるときはそっと書いているかもしれませんが、一応一区切りです。



 それではこのブログをたまに覗いているコアな人たち良いお年をお迎え下さい。


 いつでもどこかで会いましょう。



                  大森茂幸
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# by revolver0319 | 2013-11-14 21:49

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